アレルゲンについて
アレルゲンはアレルギー反応を引き起こす抗原の総称である。
アレルゲンの性状
分子量サイズ
低分子量
アレルゲンは低分子ペプチドまたはタンパク質であり、化学構造やアレルギー決定構造の組合せで生体への影響が決まる。多くのアレルゲンの分子量は10,000~40,000で、タンパク質としては低分子物質で粘膜を通過できる分子量である。
免疫原性
アレルゲンは低分子物質で、抗原として免疫原性(生体の免疫系を刺激して抗体産生を誘発する性質)を満ちえないことも多い。アレルゲンを構成するタンパク質は特殊性がなく、分子構造は認められないが、溶解性が高く分子量の小さいタンパク質である。
感作量
強力なアレルゲンとなる多くの花粉タンパク質分子量は小さいので、容易に放出され少量が自然暴露される。花粉症患者が1シーズンで吸入する花粉量は僅少でマイクログラムである。
生物活性
酵素活性
アレルゲンは一般的に皮膚や粘膜への浸透性が高く、多くは酵素活性を保持している。例えばスギ花粉の主要な2種類のアレルゲンはいずれもペクチン分解酵素が発現する。ヒョウダニの主要なアレルゲンは、システインプロテアーゼを発現する。このようなアレルゲンの生物活性は酵素活性のみならず、結合タンパク質、酵素阻害因子、構造タンパク質など多岐にわたる。
安定性
生物活性の安定性はアレルゲン種によりさまざまである。スギ花粉由来のアレルゲンは、加熱、酸・アルカリ処理により編成して失活する。一方、ネコ由来のアレルゲンは安定性があり、容易に破壊または変形しない。ネコが家屋からいなくなった後も数年にわたりネコのアレルゲン成分が検出されるという。
主要アレルゲン一覧
(起源 アレルゲン 生化学的活性機能 分子量(kD))
花粉
スギ Cry j 1 ペクチン酸リアーゼ 41~45
スギ Cry j 2 ポリガラクツロナーゼ 45
ヒノキ Cha o 1 多糖リアーゼファミリー1
ヒノキ Cha o 2 ポリガラクツロナーゼ 45
ブタクサ Amb o 1 ペクチン酸リアーゼ 38
ブタクサ Amb o 9 ポルカルシン 10
ヨモギ Art v 4 プロフィロン 14
ヨモギ Art v 5 ポルカルシン 10
ダニ
コナヒョウヒダニ Der f 1 システインプテアーゼ 27
コナヒョウヒダニ Der f 3 トリプシン 29
コナヒョウヒダニ Der f 11 パラミオシン 98
ヤケヒョウヒダニ Der p 3 トリプシン 31
ヤケヒョウヒダニ Der p 4 α-アミラーゼ 60
コナダニ Tyr p 13 脂肪酸結合型タンパク質 15
動物
イヌ Can f 1 リポカイン 23~25
イヌ Can f 3 血清アルブミン 69
ネコ Fel d 2 アルブミン 69
ネコ Fel d 4 リポカイン 22
昆虫
ミツバチ Api m 1 ホスホリパーゼA2 16
スズメバチ Pol d 1 ホスホリパーゼA1 34
ワモンゴキブリ Per a 6 トロポニンC 17
チャバネゴキブリ Bla g 2 アスパラギン酸プロテアーゼ 36
食物
鶏卵 Gal d 1 オボムコイド 28
鶏卵 Gal d 2 オバルブミン 44
鶏卵 Gal d 4 リゾチームC 14
牛乳 Bos d 5 β-ラクトグロブリン 18.3
牛乳 Bos d 8 カゼイン 20~30
タラ God c 1 β-パルブアルブミン 12
エビ Pen a 1 トロポミオシン 36
大豆 Gly m 1 シャペロン 7
ピーナッツ Ara h 1 7Sグロブリン(ヴィシリン) 64
トマト Lyc e 1 プロフィリン 14
アレルゲンの由来
吸入アレルゲン
スギ、ヒノキなどの花粉、微生物胞子(芽胞)、ペットや小鳥など動物の被毛、唾液、羽毛、室内人、ダニ体液など。
摂取アレルゲン
経口的に摂取する食物アレルゲンは、消化器から体内に入る鶏卵、牛乳、そば・米・小麦などの穀類、魚介類また果実及び薬剤など。
接触アレルゲン
ネックレスのクロム・ニッケルなどの金属、漆、毛染料など。薬剤液の注射、スズメバチなどの節足動物による毒素の刺咬などは注入アレルゲンとも呼ばれる。